Sports Co-Creation

福島県いわき市、郡山市で
SSK野球教室を実施

野球ができるありがたさを知り、プレーする子どもたち

2011年3月11日、東日本大震災。福島第一原子力発電所の被災により、放射性物質が拡散し、福島県の各地域では屋外での活動制限が行われた。子どもたちは外で遊ぶことはもちろん、大好きな野球もできなくなってしまった。そんな時、子どもたちの笑顔のためにと福島県の先生が動き、実現したのが、プロ野球選手会が開催しているキャッチボールクラシック。2015年からキャッチボールクラシックのオフィシャルスポンサーとなったSSKは、発祥の地である福島県とのつながりから、今回、いわき市、郡山市と2会場で野球教室を開催。2011年以来となる東北地方での野球教室には、300名以上の中学生の笑顔が溢れました。

言語化して基本プレーの意味を理解する

初日は、いわき市の平球場で、二日目は郡山市の磐梯熱海スポーツパークで実施。初日は、西口文也氏、中島聡氏、高須洋介氏、真田裕樹選手(福井ミラクルエレファンツ)が担当し、二日目は西口氏に代わって、デニー友利氏が駆けつけてくれました。

晴天のいわき市平球場で、まずランニングについて横浜DeNAベイスターズでファームチーフ打撃コーチを務める高須洋介氏が「ベースの角を踏むとケガをします」と話し始めました。事前打合せでは、監督から、「できるだけ早く次の塁に行くために、角を踏むように指導しています」という言葉もあったが、「角を踏むと、かかとを痛めたり、アキレス腱を切ったりとケガをするリスクが高まります。コンマ何秒しか変わらないので、ベースの中央をしっかり踏んでください。プロ選手もそうしています」と、まずはベースを安全に駆け抜ける練習から。ベースの真ん中を踏むこと。まっすぐ走ること。ラインの外側を走ること。その3つのポイントに注意しながら、次に打った瞬間走る練習や勢いよく2塁を狙う練習と続いていきました。

二日目、「キャッチボールって相手のどこに投げるの?」と生徒たちに投げかけたのは中日ドラゴンズで投手コーチを務めるデニー友利(友利結)氏。『相手の胸、取りやすい位置』という回答に、「じゃあ、なんでそこに投げるの?」と再度聞くと、答えられた生徒はいませんでした。「次のプレーのために相手が取りやすい位置にボールを投げるんだよね」とデニー氏は説明。基本として分かっていることも、こうして言語化してきちんと意味を把握することで、基本が忠実にできるようになる、と野球教室は進みました。

ポジション別に分かれた練習で、生徒が緊張していると、「プロ選手になるともてるぞ」と話した真田選手。2015年シーズンは福島ホープスでプレーし、福島では馴染みのある真田選手の言葉に、少しリラックスし、『バトミントン部はもてるんですよ。Tシャツからお腹が見えるからですかね』との質問も。「しっかりと抜きん出ること。もてるためにも野球がんばらなあかんな」と、普段とは違うトーンでの会話も楽しんでいました。

考えながら練習する大切さ

全体や個別の指導、ポジション別の練習でも、重要なポイントは盛りだくさん。覚えておくべきキーワードがたくさん出てきます。「守備の際、『両手で取りなさい』と言われることもあると思いますが、もう一つ高いレベルを目指して、片手で取る練習をしましょう」、「引いてエラーするよりも、前に出てエラーする方がいい。ボールは自分よりも前に弾くこと。前に弾いていけば、野球はどうにかなる。攻めのエラーはオッケー」、「ピッチャーも、投げ終われば守備の意識を。守備が上手いと自分を助ける。守備を意識すると、よりピッチングに生きてきます」などなど。

「バッティングの際、最短距離で打とうとしなくてもいいので、バットをラインで入れていくように、タイミングをしっかり合わせて。筒香選手、柳田選手、山田選手。いいバッターの特徴はレベルスイングです」というプロ選手の実例を引いての説明には、選手たちも納得。また、大きな声で挨拶することは褒められたが、「ミスは当たり前。だからチームでカバーします。みんな、挨拶は大きくていいんだけど、一つ一つのプレーの指示を大きな声でしましょう。大きな声で挨拶するのも、広いグラウンドで指示の声がはっきりと伝わるため」と、プレーに繋げて考えると、より今できていることが生きてくるというヒントもありました。

「普段練習している時と違うことを言われたり、以前野球教室で聞いたことと異なるやり方だったりということは、もちろんあると思います。それでも大事なことは、野球って色んな理論があるんだと知って、その中から自分にあったものを選んで練習していくことにありますよね」と語った高須氏。難しいプレーをするよりも、基本を繰り返し練習し、身につけること。そして、自分のレベルやその時の状況に応じて、考えながら練習する大切さが、今回5名の元プロ野球選手が伝えようとしたことだと思います。

福島の先生や子どもたちと話していると、震災後、それまでと同じようには野球ができなくなったことで、今を大事にプレーすることに繋がっているということが伝わってきた。一日で終わる野球教室が、魔法のようにプレーを変えることはありませんが、今野球できることを大切にする気持ちを持つ福島の子どもたちには、きっと今回の野球教室でのヒントが、これからのプレーに繋がっていくように感じられました。SSKは、今後も福島県での活動を続けていきます。