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小学校の授業で初めて実施
「キャッチボールで心を学ぶ」

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少年野球をがんばる家族を応援しようと、取り組みを進めているSSKでは、日本プロ野球選手会が振興しているキャッチボールクラシック(CBC)を応援しています。今までは野球少年・野球少女にキャッチボールの意味を知ってもらう取り組みが中心でしたが、今回、初めて小学校の授業でCBCが行われました。暖かな春の日差しが降り注いだ3月初旬、八王子市立第四小学校で行われたCBCをレポートします。

素手で行ったキャッチボール

CBCが行われたのは、東京都八王子市の第四小学校3年生の授業。それに弐分方小学校の3年生も加わり、総勢約120名が参加。1月末に日本ハムファイターズなどでプレーした森本稀哲氏と東北楽天ゴールデンイーグルスでプレーした大廣翔治氏がコーチとして2つの小学校を訪れ、子どもたちにキャッチボールを指導。その後、休み時間や放課後にキャッチボールの練習をし、どうすれば上手くできるかを話し合った子どもたちが、元プロ野球選手の再訪を受け、上達した姿を見せてくれました。

キャッチボールクラシックとは、1チーム9名が5名と4名に別れ、7メートル離れた位置でキャッチボールを行い、2分間での投球回数を競うもの。全国大会も行われており、昨年12月に行われた小学生の部では、優勝チームが115回を記録しています。

ただ、今回は120名いる児童の中、野球を習っているのは2人だけで、ほぼ野球経験がない子どもたち。そこで、グラブと軟式ボールではなく、キャッチボール専用球『ゆうボール』を使用し、素手でのキャッチボールに。ゆうボールは、見た目は硬式ボールのように縫い目があり投げやすく、当たってもケガをしない柔らかいボール。子どもたちは安心して投げ、捕ることができました。

低下し続ける子どもの投力

小学生の運動能力を全国的に調査している「体力・運動能力、運動習慣等調査」(スポーツ庁、平成28年度調査)によると、子どもの体力は、昭和60年頃をピークとして低下傾向が続いています。その中でも顕著なのがソフトボール投げで、男子が29.94mから22.41m、女子が17.60mから13.87mと、30年余りで大幅に低下。右手と右足が同時に出てしまったり、砲丸投げのようになったりと、公園で野球が禁止されるなど、投げる機会の減少により、ボールを投げるということが、ままならないようになっています。

体全体を使うボールを投げるという行為は、基礎体力の向上に繋がり、野球だけではなく、生涯スポーツとして人気のあるテニスやバドミントンなど、他競技にも役立つといいます。


前述したスポーツ庁による全国調査で、東京都は投力で最低レベルにあり、八王子市は東京の中でも投力の低い地域との結果が出ています。今回、CBCを授業で行うことに積極的だった弐分方小学校校長の清水弘美氏は、「投げることが日本で最低レベルにある地域で、投力をなんとか上げたいと思っていました。ただ、指導してもらうにも、子どもたちには、遊びの要素がないと定着しないんですね」と、CBCがゲーム感覚で競っていることを前向きに捉えています。

「それにキャッチボールのイベントは、学校教育に向いています。サッカーだと、うまい子が中心になって、ボールにさわれない子がいます。でも、これは必ず順番がある。そして、もっといいのが、相手にあった投げ方をしないといけないこと。そこがいいんですよね。周りの子どもたちもフォローをどうするか、などゲームの中に工夫の余地があるんです」と重ねた。


キャッチボールで心を学ぶ

練習が始まると、子どもたちは自分の投げる力や、捕る相手に合わせて、上から投げたり、下からにしたり、また、ワンバウンドにしたりとキャッチボールを楽しみました。試合になると、一気に盛り上がり、『がんばれー、フォローして』と応援の声が響き、子どもも先生も目の色が変わり本気モードに。

閉会式後も、子どもたちの輪に混じっていた森本稀哲氏は、「嬉しいとか悔しいとか、思いはそれぞれだったと思います。でも、練習でしてきたことは、思いやる気持ちだったと思います。それを勝負で学べた。うまくいかなかったチームもあると思います。でも、人が一番成長できるのは、悔しさを知ったときです」と、負けて涙する子どもたちにメッセージを送りました。


現在は、楽天でスクールを担当する大廣翔治氏は、「最初来た時は、うまくいって20回くらいでした。ボールが逸れて、5回もできないチームもありました。それが練習を重ねて、30回にまでなって。可能性があるんですよね。頑張ったら結果が出る。キャッチボールもそうだけど、みんなはこれから夢があると思うので、今回のように挑戦して、諦めないで頑張って欲しいです」と将来に繋げて欲しいと語りかけました。

運営の手伝いで参加した保護者は、「普段サッカーをしていて、なかなか野球をやる機会がないんですが、今日はみんなで投げることを楽しんでいて良かったです」と話し、第四小学校校長の井上正彦氏は、「今日はキャッチボールを通して、チームでひとつのものを作り上げる過程を学べたと思います。練習では、喧嘩をしたり、相手のせいにしたり。でもそこから、どうやったらいいのか。協力して、相手に合わせたり、力を合わせることで、心を学ぶことができました」と成果を口にしました。

初めて小学校の授業で行われたCBCは、先生にも子どもたちにも、ひとつの結果を出すことができたように思っています。SSKはこれからもプロ野球選手会と共同し、キャッチボールの楽しさを広げ、少年野球をがんばる家族を応援します。

キャッチボールクラシックとは

9人1組でキャッチボールの正確さとスピードを争う日本プロ野球選手会考案の新ゲーム。5人と4人に分かれた2チームが7m離れ、2分間で何回キャッチボールができたかを競う。
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