選手の信頼を得ることで
新しい提案を
東京支店でベースボール事業部に所属し、会社を代表する野球ブランドSSKの販促渉外を担当している松井尊嗣は、プロ選手だけでなく、社会人、高校野球まで幅広く野球選手に向き合っている。野球場やグラウンドなど最前線でSSKをPRする販促担当者は、自社商品だけでなく、野球の知識や経験も必要となる。トップブランドではないからこそ、人間力を磨かないと勝負できない。「そこから仕事の面白さが広がっていく」と松井は前向きに語る。
Takeshi Matsui 松井尊嗣
東京支店勤務 / ベースボール事業部販促渉外グループ所属
2008年4月入社 / 最終学歴:大卒、文学部 / インタビュー:2016年12月実施
仕事の原点
野球一家で育った松井は、地元の公立高校で甲子園を目指す高校球児で、大学進学後もプロ野球選手になることを夢見ていた。
転機は高校2年生時に訪れる。肘をこわしてピッチャーから一塁手になったのだ。193cmの体格を生かしたバッティングに自信はあったものの、足が遅い、守れないと、客観的に自分を見るようになって、「プロにはなれない」と判断した松井だが、それでも野球が好きなことは変わらなかった。
「昔から野球道具が好きだったんですよね。グラブの型を付けたり、柔らかくしたり。ただ、高校まではグラブについて考えたこともありませんでした。
大学ではいろんな人の考えを聞いて、捕り方に合わせた理想のグラブを自分なりに考えました。打ち方、捕り方、走り方。選手の身体能力にあった動きとそれをサポートしてくれる道具。今の販促担当という仕事の原点は、大学時代にそういうことを考えたり、チームメイトのグラブの型付けをしたことにあるような気がします」
提案から生まれる人間関係
高校や社会人の現場に行っても、この選手にはこの道具が合うんじゃないか、もっとプレーが良くなるんじゃないかを考える。
「本人に合っている道具を勧めたいですね。選手から見ると、僕は数あるメーカー担当者の一人に過ぎないんです。でも、選手のプレーを見て、彼らのより良いパフォーマンスを考えて、このグラブでこういう捕り方をすることで、今の課題を解決できるんじゃないか、と提案することで、僕自身に興味も持ってもらえます。だから押し売りはしません。認知をしてもらって、評価してもらうまでの人間関係を作るのが楽しいですね」と笑う。
西武秋山選手の信頼
松井がサポートする選手の中に、侍ジャパンに名を連ね、2015年にはシーズン最多安打を記録した埼玉西武ライオンズの秋山翔吾選手がいる。
秋山選手は松井のサポートについて、こう語る。
『僕たち選手にとって重要なのは、まず道具が行き届いているか、なんですね。バットが折れたとか、手袋が破れたということがあれば、その追加が必要です。補充してほしい、というリクエストをこちらからするのではなく、常に松井さんから言ってもらえるんで、気持ちよくできますね』
『それは、僕だからというわけでもなく、ファームの選手を相手にしてもそうで。先輩がいれば言い出せないところもあるし、そうあるべきでもあると思うのですが、松井さんから「大丈夫ですか?」と言ってくれるんで、ファームの選手たちでも道具で困ることはないと思います。何がなくなるか、事前に分かっているんですよね。いろんな選手のニーズを把握しているので、新しい提案があると、選手としても、じゃあ、取り組んでみようって自然となれるんです』と教えてくれた。
松井は、販促の存在意義について、「僕がいなくても野球は行われます。ただ、何かトラブルがあった時にその場にいなければ対応できない。いれば良かったという後悔はしたくないんですよね。ただ、もちろん常に現場にいられるわけではないので、常に気をかけるように心掛けています」と語る。「僕が間に入ることで、試合がスムーズに行われたり、選手のプレーが向上したり。販促担当者としてのゴールは、まだまだ見えない感じですが、一緒に走りながら考えてくれる上司がいるので、安心して仕事に集中することができています。基本的に人が好きで、プレーをじっと観察するのが得意なので、それを生かしながら、選手にとってプラスになる提案をこれからもしていければと思います」